おもてとうらの話
ともだちが急に心細いからついてきてくれないかというので、何かと
思ったら、健康食品を売るバイトだった。
そこはお店ではなく、テナントビルの一室には段ボールがうずたかくあるだけである。
そのカーテンの間仕切りの向こうから二人の若い男性が出てきた。
年の頃はまだふたりとも若い。背広を着ているのにネクタイはせず、シャツのボタンを2つも外していていくぶん悪ぶった感じが目立つ。
私と友達はとにかく段ボールの中にあるパックの卵を袋に1つずつ入れるように指示された。
威圧的な雰囲気に息苦しさを感じながら友達と私は黙々と卵を詰めた。
少し時間が経つと、ひとりのお年寄りがやってきた。
「卵をただでもらえるのは、ここでええのですか」
「いえ、ただではなく100円いただきます」
「はいはい」
と小さながま口から100円を取り出そうとすると
男性の一人が飛び出してきて
「おばあちゃん、時間はまだですよ」
と言った。雨も降って寒いので中に誘導した。
ほどなくして、また一人また一人とお年寄りは現れ
またたくまにせまい部屋はいっぱいになる。
お年寄りの手を取り、優しい笑顔で席まで誘導する2人。
1パック100円の卵を売ってあとはどうするのかわからない。
ただの安売りではないのは確かだ。
ただ、友達と私は後ろめたい気持ちでそこに立っていたのは忘れられない。