傍観者日記 連休編

電車に乗り込むと、目の前に体格のいい親子が座っていた。
厳しい顔つきの父親と同じように、りりしくしようとしている子供。
子供がくしゃみをしてしまったので、父親は優しくタオルを差し出した。
「あっちに走っているのは電車?」と、子供。
うんそう、とささやく程度に父が答える。
今度は
「あっちに走ってるのも電車。」と父。子供、うなづく。

向かいに若い女性の二人連れが座る。
派手なファッションではあるが年は10代後半だろうか、まだあどけなさが残っている。
「安っぽい女と思われてるんじゃない?
遊びたいんだったら遊びたいで割り切ればいいじゃない、あの人はそういう人だって。」
乾いた空気に強がったような女性の声が響き渡る。

その横には虐待の記事を必死に読む初老の女性。
すすけた色のジャンパーにくたびれた帽子、肩から提げている鞄はおそらく中古市で500円で買ったものだろう。
「逃げたら殺す」「血痕」と物騒におどる文字を喰い入るように見つめている。

さっきの親子の父がリュックをごそごそしてから子供に「今、食べる?」と聞いた。子供は、小さくかぶりを振った。